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酒税法改正が株価に与える影響

 酒税法改正

 2020年10月1日に酒税法が改正され、ビール・発泡酒が減税、第3のビールは増税となる。また、ワインも増税の対象となる。特にビール産業では、第3のビールとビール・発泡酒の価格が近づくことで好調であった第3のビール(新ジャンル)成長が止まる可能性がある。また、今後2020年、2023年、2026年と三段階に渡って酒税法は改正され2026年には種別がなくなり、同じ税率が課せられるようになる。今回の増税はその第一段階である。

 

                                    2020年10月酒税法改正による増税・減税

種別 1L当たり
ビール -20円
発泡酒(麦芽比率50%以上) -20円
第3のビール(新ジャンル) +28円

 

ビール類の酒税の税率改正の内容 

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                                 (出典) 三井住友銀行「国内酒類業界の動向」

 

酒税法改正でビール・発泡酒は減税、新ジャンルは増税アサヒビールが大手4社で先駆けて価格改定を通知

 

https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2020/05/2020-0520-1453-15.html

 

 現在のビール業界では大手4社(サッポロ、キリン、サントリー、アサヒ)がビール全体の99%の売上を担っており、超寡占状態である。以下は大手3社の6ヶ月日足株価推移。(サントリーホールディングスは非上場企業のため、以下は3社間比較を行う)

 

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サッポロホールディングス(2501)

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アサヒホールディングス(2502)

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キリンホールディングス(2503)

 

 各社とも持株会社ではあるが、酒類の売上が売上に大きく寄与しているため似たような株価推移をしている。しかし、私は酒税法が改正される10月以降明暗が分かれると予想する。

 

第3のビールブームの終焉

 麦芽含有量に規定がない第3のビール(新ジャンル)は、近年着実に成長を遂げてきた。各企業が商品の値段を上げずに味の改良を行ってきたことに加え、度重なる増税や長く続く不況が低価格競争に有利に働いたからである。

 

ビール類出荷数量推移(課税移出数量ベース)

 

 

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                                    (出典) 三井住友銀行「国内酒類業界の動向」

  上図で明らかな通り、ビール市場全体は縮小している。これは若者のビール離れやRTD(缶チューハイなど)の台頭に起因するものである。こうした中、第3のビールはビール・発泡酒を押さえつけて人気を伸ばしていた。第3のビールの強みは価格の低さである。味は明らかに劣るがビールを常飲したい人にとって「安さ」が最大の武器であった。酒税法の改正は、第3のビールだけが増税の影響を受けるため最大の武器に致命的なダメージを背負うこととなる。

 

 では、第3のビール(新ジャンル)に一番力を入れている企業はどこだろうか。東洋経済新報社が出版している2021年度版業界地図によると、下図のようになっている。

 

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                                                                         (注)2019年の販売数量ベース

                                                                             (出典)東洋経済新報社より作成

 

  3社間で、比較するとキリンは新ジャンルの構成比が高い。キリンは2018年3月に「本麒麟」という新商品を出し初年度で累計出荷本数(350ml缶換算)は3億本を突破。売上目標は2回も上方修正され、過去10年に発売されたキリンビールの新商品の中で売上No.1になった。加えて近年に入り売上が減少はしているものの、いまだに高い人気を誇っている「のどごし生」のブランドもある。キリンの売上はこうした新ジャンルに支えられている。一方、アサヒは新ジャンルに「クリアアサヒ」がある。クリアアサヒは、東洋経済社の記事によると新ジャンルの中で出荷されたばかりの本麒麟を除くと売上最下位である。「アサヒ・ザ・リッチ」などの新商品を出して対抗はしているがヒット商品を出せていないのが現状である。サッポロも同様に「ゴールドスター」や「麦とホップ」などがいまいちヒットしていない現状である。

 

 つまり、キリンを除く2社は酒税法改正によってビール・発泡酒が売れると利益が増加することが予想される。2020年10月の1回目の改正で消費者がどこまで第3のビールから離れるかは微妙なところだが、2026年には第3のビール離れが加速することは間違いないだろう。新ジャンル以外のヒット商品を出す企業に注目したい。